178.長文です。ごめんなさい
投稿者:リズ - 2000年 09月 16日 14時 41分 53秒
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リズです。また書き込ませていただきます。
アメリカから帰ってきてまた、過去ログを読ませて
いただきました。かなり長くなりますが、アメリカで
経験から思ったことなどを書いていこうかと思います。
ただ、私の場合現在はロスで働いていますし、住んで
いたときもカリフォルニアなので外国映画を見たり、
触れたりするのには他の地域より条件的によいと思い
ます。一時期、オレゴン州にもいたのですが、カリ
フォルニアより日本に触れるということが少なかった
気がしました。
●ポケモンブームについて
日本のアニメがアメリカ人にも認められているのは認めますが、
昨年ポケモンがあれほどブームになりヒットしたのは宣伝方法
のうまさが要因です。アメリカでの配給権を買ったワーナーは
英語に吹き替え、サントラを差し替え、100社以上の企業と
キャラクターのライセンス契約をし商品を発売し、まるでアメ
リカで生まれたキャラクターのように売り出しました。実際、
主人公の名前やピカチュウとミュウツー、ルギアなど限られた
キャラクター以外のポケモンの呼び名も違いますし、宣伝も
ハリウッド映画並に大がかりにしています。プレステやセガ
などと同じようなタイプの売り方です。(ご存じの方も多い
かもしれませんが、ファミコンがブームになった時、アメリカ
ではニンテンドーの名前で売り出され、日本の事をよく知ら
ない人はアメリカ製だと思っていました。実際、私が住んで
いた所の近所の子供たちもニンテンドーはアメリカの会社
だと思っていました。)
ちなみに、ワーナーは昨年の「ポケットモンスター ミュウ
ツーの逆襲」の配給権を買うために500万ドルかかったと
言われていて、同じ額もしくはそれ以上のお金をかけて昨年
のポケモンブームを作り出しました。そして今年の7月には
「幻のポケモン
ルギア爆誕」が封切られましたが、第1週目
の結果は、2752館の公開で1957万(1万ドル未満は切り捨て)
でした。昨年はちなみに、第1週目は3043館の公開で$3103万ドル
(1万ドル未満は切り捨て)でした。スクリーン数や公開時期の違い
はありますが、やはりアメリカでいわれているのは宣伝の違いと
今回はワーナーが作り替えなかったので不評だったというのも
あります。もちろん吹き替えはしましたが、主人公の名前を例に
挙げると前作は[Ash Ketchum]だったのに対して、今回は[Satoshi]
という日本版そのままの名前です。他のキャラクターの名前もそう
で、前作は[Brock Harrison]や[Giovanni]などと何人?と考えて
しまうようなネーミングで売り出していました。
●海外での人気を認識していないか? そしてハリウッドは閉鎖的か?
前の書き込みで書いたように、今年の夏「ゴジラ2000 ミレニアム」
がアメリカで公開されましたが、日本では大ヒットと報じられていて
ビックリしました。というより、いつものことなんですが。
私は逆に日本映画人たちが海外で少しでも受ければ、まるで世界中に
ヒットしたかのように報道するのを懸念します。もちろん、日本の興行
収入などと比べたり、かかったコストと比べればヒットといえるでしょう。
しかし限定公開の場合は、前の書き込みですずかさんが書かれてるように
一部地域しか上映されませんし、ビデオ化されても100ドルを超える
値段で普通の人は買いません。(大ヒット作だと9ドルとかでビデオが
買えるのはアメリカに旅行に行かれた方ならご存じだと思います。)
あまり映画に興味のないアメリカ人には公開されたことすら知られない
のが実状です。そして、ポケモンブームのことで書いたように、日本で
ヒットされたことは報じられましたが、こんなにも日本版と異なって
いたことは報じられていましたか?主人公の名前が違う事は一部で報じ
られていたようでしたが、私から見ると良いことばかり報じていて
今後日本アニメをアメリカ市場に売り出すのはアメリカ風にしないと
いけないのか?とか考えてるような報道の仕方とは思えませんでした。
ただ、北野映画など海外の映画祭で賞を取った作品が日本でヒット
出来ないのは配給会社の宣伝の方法に問題があると思います。これは
日本映画のみならずオスカー以外の海外映画賞を取った作品の宣伝に
関して配給会社が思っているジンクスみたいなもので、例えばベルリン
映画祭などでグランプリを取った作品などの宣伝するときは「大ヒット
できない」ことを前提に宣伝方針を考えるのです。私も配給会社に
入ってすぐこの話を聞いて理解できませんでした。例えば「アイス・
ストーム」はカンヌ映画祭で脚本賞を受賞しましたが、この時宣伝部
の人が言ったことは「ああ、これで大変になる。もっと売れなくなる。」
という言葉でした。特に娯楽作品でない場合は、かなり宣伝の方も
諦めムードでいるのが実状です。
繰り返しになりますが、ヒットしたと言われている日本映画(ポケモンは
のぞく)のアメリカでの売り上げはコストと比べれば黒字です。また一部
日本びいきの人やマニアの方には受けています。しかし、アメリカでの
認識度などは日本での評価を聞いていると高く思いがちですが、低いもの
です。しかし、これはハリウッド作品以外の作品全てに対する状況が
同じです。アメリカにいるとなにが悲しいかというと、日本のように
ハリウッド映画以外がいつも見れないことです。フランス映画にしたって、
スペイン映画にしたってそうです。ほとんどが限定公開でロスかNYの
アート系の映画館しか上映されません。
書き込みで「アメリカ市場において東洋人が主役の映画が受け入れ
られにくい」というのがありましたが、東洋人以外でも一部力を持つ
ハリウッド人たちは黒人が主役の映画も軽視しがちです。これは
「エリザベス」の監督シェカール・カプールが言っていたことですが
新作で南アフリカの指導者ネルソン・マンデラの映画を撮るのですが、
監督自身は当初この映画は南アフリカ出身の人が監督すべきと思って
辞退していたのに、ハリウッドのお偉方から「観客は黒人の伝記映画
なんて見たくないからね」と言われやっぱり監督することを決めた
そうです。
あと、一部のアメリカ人は字幕を読むのが苦手という理由で外国映画
は吹き替えの方が好まれます。これは英語と日本語の違いともいえ
ますが、英語の場合しゃべれても読むのが苦手、読めない(スペルが
分からない)という問題があります。日本語はたとえ漢字が読めな
かったとしても大体意味が感じ取れますよね。
東洋人とかの人種の問題以前に、アメリカにいてつくづく思うことは
日本やアジアについての認識度が低いということです。もちろん、日本
びいきの人がいることは認めますし、空手やスシなど日本の文化が浸透
している物もあります。しかし、日本はどこにある?とか、日本人の
衣食住はどんな感じとか知られてなく、誤った情報を覚えていたりして
それも受けない理由の1つかと思っています。この問題について語ると、
映画から離れてしまうのでこの辺でまとめますが、アメリカ人はヨー
ロッパ(特にフランスなど)に憧れそれを題材にした映画を作ったり
しますが(「フレンチ・キス」をアメリカ人の友人と見に行ったとき、
友人は内容は酷評したけどフランスの風景について何時間もうっとりと
語っていました。他の観客もフランスの田舎へ行ってからのシーンで
感嘆したりしていました。)、全く知らないアジアの国などは誤った
描き方をすることが多いです。(香港は香港マフィアとか、タイとか
インドネシアは危ないとか、いわゆるステレオタイプ)
●アメリカ人は人気俳優をみに映画館へ行くか?
私がアメリカに住んでいて、日本と比べると上に書き込みは違うと思い
ました。そりゃ、映画ファンで詳しい方もいますし、映画学生の方など
はもちろん知識も豊富です。しかし、アメリカ人の多くはAランクの
スター(ケビン・コスナーやトム・クルーズなど)以外は、顔は知って
いても名前や出演作となると日本の映画ファン程ではありません。日本の
映画ファンは自国の俳優でもないのに名前を覚え、出演作を見て「○○
に出てたときの**は良いけど、この作品だとダメだよね。」とか話し
たりしますよね。アメリカでは、「週末、新作がおもしろそうだから
見に行こうよ!」という軽いノリで映画を見に行くのが普通のアメリカ人
だと私は感じています。もちろん、セレブレティが主演でその人のための
映画ってかんじの作品は別ですが。(そういう作品は大体、学生とかが
誰々ってカッコイイ!みたいなノリで見に行ってます。)
●製作費の問題について
お金をかけなきゃダメだよね。という意見が出ていましたが
実際のところ日本でも、たとえ1週間で打ち切られるような
駄作でも1億以上の製作費がかけられてる作品が多いです。
(ただ監督によってはあまりにお金の流れが間違ってるのも
あるのは認めますが、1億という額は日本の興行収入から
考えると大赤字です。)
もちろん、ハリウッド映画は数十億とかけているものがあり
ますが、お金をかければ良い作品が出きるわけではなく、
脚本や俳優の演技などそちらの方が製作費より重要だと思い
ます。実際アメリカでも先月、2大映画チェーンが倒産し、
また昨年の「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」と「シックス・
センス」のヒットや、今年の夏の興行収入が減少したことも
あり、製作費をかければヒットという考えをハリウッド人
たちもやっと改めてきています。
また、政府がお金を援助をという案がありましたが、かわはら
さんの意見と同じで、かえって業界を弱体化させる危険があり
ますし、内容を制限されたりする可能性があり賛成できません。
企業に援助してもらった方がまだ良いです。ちなみに海外では、
銀行が融資をしたり、映画団体が基金を設立していて学生などを
援助したりしています。政府でということでお隣の韓国の政府は
1年に必ず何本の国産映画を上映しないといけないと映画館に
義務づけています。日本映画の制限などはニュースで報じられて
いますが、韓国でもハリウッド映画が人気なのは日本と同じです。
そこで韓国政府は以前からこのような政策をとっているのですが
98年頃からアメリカ側が圧力をかけ、韓国政府も映画館に対する
義務を軽くしようとしました。そこで、韓国の映画人たちはデモ
行進を行ったり、外国の映画会社などにも「ハリウッドからの圧力
に対抗を!」ということで署名を求めてきました。(実際、私の
勤めていた映画会社にも運動に参加して欲しいとの嘆願書が送ら
れてきました。)